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シックハウスについて


1. 暮らしの中のアレルギー

暮らしの中で発症するアレルギー・・・ダニ、カビ、花粉、ハウスダスト、大気汚染、ダイオキシン・・・
さまざまな化学物質が原因となっている可能性があります。

2. シックハウスの概念

建築に用いられる建材や、家具、家庭用品などから発生する有害な化学物質や、
カビ・ダニによって室内の環境が汚染され、さまざまな体の不調を起こすこと(症状)です。
症状は人によってさまざまで、個人差も大きく、複数の症状が現れることもあります。

化学物質の過敏症反応については、ケミカル・センシティビティという用語が用いられていましたが、
その後、エール大学の内科の先生により、マルチプル・ケミカル・センシティビティ(MCS)と紹介されました。

1976年、フィラデルフィアで開かれた在郷軍人の集会参加者に
大量の発病者と死亡者を出した、レジオネラ菌が原因の「在郷軍人病」を契機に
空調設備や建材、家庭用化学薬品、微生物などが原因となって引き起こされる
さまざまな症状を「シックビル症候群」と呼ぶようになりました。

その後に、一般の生活環境において、シックビルと同様の症状を訴える人が増え始め
住宅が影響すると考えられるめまい、頭痛、吐き気、平衡感覚の失調、粘膜や皮膚の乾燥感などの症状を
シックハウス症候群と呼ぶようになりました。

 ここで、「中毒」とは、大量の化学物質を浴びることによる症状。
「アレルギー」とは、原因物質を除去することで症状が軽減するレベル
いわゆるシックハウスは、このレベルであると考えられます。
「過敏症」になると、中毒量の十万分の一程度の濃度でも症状が現れるようになってしまい、
原因物質を除去しても症状が軽減しなくなるなど、治療も難しくなります。

シックハウス症状
 
北里大学の研究によると、日本人の1割...1000万人が
過敏症による体調不良を抱えていると考えられています。
 

3.法的整備

2003年(平成15年) 7月1日施工の建築基準法改正 シックハウス対策に係る技術的基準の概要です。

1. 規制対象とする化学物質
「クロルピリホス」 「ホルムアルデヒド」 の2物質が対象となります。

2. クロルピリホスに関する規制
居室を有する建築物には、クロルピリホスを添加した建材の使用を禁止。
(クロルピリホスは土壌処理にも用いられますが、今回の規制には含まれません。)

3.ホルムアルデヒドに関する規制
3-1.内装仕上げに使用する建材面積制限
居室の種類、換気回数に応じて、ホルムアルデヒドを発散する建材の面積制限を行う。

建築材料をホルムアルデヒドの発散速度によって区分し、区分ごとに使用制限が行われます。
区分は、JIS、JAS(平成15年3月施行)によって定められています。

ホルムアルデヒドの発散速度 建築材料の区分
(ホルムアルデヒド発散建築材料)
内装部分の仕上げに
使用する制限
対応するJIS・JAS
旧規格表示 新規格表示
0.005mg/uh 以下   使用面積の制限なし   F☆☆☆☆
および大臣認定
0.005〜0.02mg/uh 以下 第3種 使用面積を制限 E0、Fc0 F☆☆☆
および大臣認定
「ホルムアルデヒドの発散の少ない建材」は、第3種以上を指します。
0.02〜0.12mg/uh 以下 第2種  使用面積を制限 E1、Fc1 F☆☆
および大臣認定
0.12mg/uh 超 第1種  使用禁止 E2、Fc2
無等級
F☆
無等級
規制対象となる「住宅等の居室」 住宅の居室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室、家具等の販売業を営む店舗売場。
 「常時開放された開口部を通じて居室と相互に通気が確保される廊下等」も、
換気・通気条件によっては含まれます。
内装部分 床・壁・天井(屋根)と、開口部に設ける建具の室内に面する部分で、
柱・廻り縁・窓台・建具枠・手すり等は含まれません。
システムキッチンや造り付け収納は、扉など居室に面する表面部分は対象となり、
内部「天井裏等」と同様の扱いになります。
押し入れ、クローゼット内部も同様ですが、居室と同じとみなされる場合は、
居室の内装扱いになります。
規制対象材料 合板・フローリング、構造用パネル、MDF、パーティクルボード、
その他の木質建材(ひき板等を接着したボード)
壁紙、現場施工用接着剤、塗料、現場用仕上材(左官材料)、グラスウール製品、
ロックウール製品、ユリア・メラミン・フェノール樹脂断熱材 など


3-2.換気設備の義務付け
家具などからの発散に考慮して、原則として全ての建築物に機械換気設備の設置を義務付け。

3-3.天井裏等の制限
下地材をホルムアルデヒドの発散の少ない建材とする。
あるいは、天井裏等も換気ができるようにする。


4.シックハウスへの取組み

シックハウスに関して、各方面からさまざまな取組みが始まっています。
まちづくりネットワークでは、シックハウスに対する取組みを、3段階(分野)で考えています。


a.建築
建築(新築、リフォーム、DIY)をする際に、少しでも知識があれば間に合います。
最近の建材の中には、健康を阻害しないように配慮した建材も出ていますし、
昔ながらの自然素材を見なおすことも大切なことです。

設計の工夫
人が住まう空間を構成する「床」「(内)壁」「天井」
そして「屋根」「外壁」「開口部(窓)」によって建築が作られます。
換気がしやすいプランニング、窓のとりかた、陽射しのとりこみ方...
これらを総合して、健康的な空間を考えることが「設計」です。

建材の選択
建築に用いられる素材は、「木」「紙」「塗料」「畳」・・・とたくさんの種類があります。
いわゆる「健康建材・自然素材」と呼ばれる建材を選びます。
ただし、建材や建築の空間が人間を健康にしてくれるのではないので、
正確には「健康を阻害しない建材」と理解してください。

適切な施工
建材が安全なだけでは十分ではありません。
建築の見えない部分には、「断熱材」「接着剤」、床下や天井裏の作り方も重要です。
また、家具、空調などの設備、インテリアなどにも配慮が必要です。

換気に配慮
化学物質は、日常の生活・・・もっと言えば人間の体内にも存在します。
従って、化学物質を100%なくすということは不可能なことです。
日常から、住まいの換気を心がけることが大切です。


b.測定

既にできている、あるいは住んでいる建物で、何となく気になる...ということであれば、
まず測定をしてみることです。

化学物質と言っても、数え切れないほどの種類があります。
一般の人が日常で接する化学物質だけでも8000種類以上あるといわれています。
そこで、測定をする際に優先的に考える物質や数値が定められています。

以下は、建設省・通産省・厚生省・林野庁・建築関連業界による健康住宅研究会が、
1996年に設計・施工のガイドライン・マニュアルの中で選定した、優先取組物質です。
この他、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、フタル酸ジ-n-ブチル、クロルピリホス...
いくつかの化学物質への取組みが始まっています。
原因物質

ホルムアルデヒドに関しては、放散量のガイドラインをWHOにならい0.08ppmと定め、
その他の物質についても、順次ガイドラインを定めています。
  

有害な物質を含む建材の種類です。現代の住宅には、一般的に使われています。
施行材

※横浜市建築局住宅部民間住宅課 編集・発行
「健康な住まい -健康に暮らせる住まいづくりのヒント-」より

  

その他、暮らしの中の家具、食材、衣類、防虫剤、芳香剤、化粧品、文具、排気ガス・・・
「衣」・「食」・「住」そして「まち」に、たくさんの化学物質が存在します。

厚生省では「標準的測定法(案)」をまとめています。
精密な測定を行うと、費用も時間もかかりますが、おおよその判定であれば、簡易測定が可能です。

まちづくりネットワークでは、測定を希望される方に対して、登録制で簡易測定を実施しています。


c.医療
新築や引越しを機に、何となくからだの調子が悪い...というときは、
何はともあれ病院に行って、診断・治療を受けたいところです。

一般市民の立場からすれば、原因はなんだか判らないけど、目が痛い、クシャミが出る、肌がカサカサする...など、
それぞれの症状によって眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、内科...に行くでしょう。
本来なら「総合科」のような窓口があれば良いのでしょうが、
その実現を待たなくても、各科の連携によって、適切な診断が行なわれるようになると思います。

シックハウスの明確な診断法は確立されていませんが、
眼科の自律神経に関する検査法(視点の、光の追従を記録する方法)によって判定するのが有効であると言われています。
診断書には「中枢神経機能障害」と記載されます。

治療法としては、転地療養などによって、化学物質の少ない環境で生活をするなど、さまざまな試みが試されています。


ハウスドクターネットワーク

学会でも因果関係などがはっきりしていないこの問題...
対応してくれる建築業者や医療機関は、決して多くありません。

それは、こうした問題が安易な訴訟問題に結びついたり、
建築業界や医学・医療の世界に一方的に責任転嫁をするようなことが
見うけられることにも一因があります。

誰もが、社会を悪くしようと思って化学物質を生産して来たのではありません。
社会が成長するために、国民が求めてきた経緯もあるのです。
その反省は、業界はもちろん、暮らしの中でみんなが考えることが大切です。

従って、誰の責任であるとか、誰が第一人者であるという議論ではなく、
各方面の知恵と議論を集約させて取り組む必要があると同時に、
情報を広く公開して、少しでも健康被害がなくなるようにしなければいけないと思います。
誰かの責任にする前に、自分達で考える...

この問題は、さまざまな領域にまたがる複雑な問題です。
そして、問題を解明して行くには、
建材メーカー、施工、設計、測定、医療・・・と、さまざまな分野の連携が必要です。



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